今回は医療事務におすすめの書籍をご紹介します。
また、医療経営士3級試験の導入学習としても活用できそうです。
医事課職員はレセプト作成や施設基準の届け出など、特化型の能力(スペシャリスト)になりやすいと考えています。
レセプト作成の技術を磨くことは必要です。
施設基準の項目を把握していることも必要です。
それはそれで大切なことではあります。
ですが、自分の特化能力を最大限に活かすためには、それだけでは足りません。
さらにそこから一歩俯瞰してみることで、今の自分は何のためにこの業務をしているのか、そもそももっとこうすれば良いのではないか。
といった広い視野で物事を考えることができます。
診療報酬を決めている中医協の動向を追うことで、ある程度未来を予測することもできます。
今回ご紹介するのは、今の自分の業務から一歩上の目線で考えるきっかけをくれる書籍です。

おすすめの本を紹介するという新企画だよ



でも本は普段あまり読まないです



そう言わずに、医療事務に有益なものを選んでいるから読んでみてほしいな



もし時間があれば読んでみます



これは一生読まないやつだ
医療現場のお金の話


今回ご紹介する本は「“中堅どころ”が知っておきたい医療現場のお金の話」です。


医療経営のリアル、診療報酬のしくみ、病院収支のしくみ、将来人口・超高齢社会のゆくえの全4章で構成されています。
本書のターゲットは中堅以上の医療従事者ですが、これから医療経営士3級の勉強を始める方にもおすすめです。
実践的な医療経営のノウハウが書かれているというよりは、その前段階の基礎知識を広く浅く学べる本です。
これを読めば、おおまかな病院のお金の流れを知ることができます。
漫画やイラストを交えて、わかりやすくまとめてくれています。
また、全ページカラーで見やすいです。
医療機関の経営状況


1章では「医療経営のリアル」と題して、現在の医療機関における危機について解説しています。
そして、その改善策についても示しています。
2024年11月に公表された、2024年度「病院経営定期調査」にて病院経営の厳しさが再確認されました。





補助金を加えた経常利益ですら、60%以上の病院が赤字なんですね



そうだね。医業収益は上がっているけど、それ以上に費用がかさんでいることが原因だよ。
日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会の3病院団体による、会員病院を対象にした定期調査。
2024年度調査では、1,200施設超えの有効回答数に及ぶ。
ここで、「利益」の種類について簡単に解説します。


- 売上総利益(アラリ)
売上高から原価を引いた利益 - 営業利益
売上総利益から販売費を引いた利益 - 経常利益(ケイツネ)
営業利益から営業外収益と営業外費用を加減した利益 - 税引前当期純利益
経常利益から特別損益を加減した利益 - 当期純利益
税引前当期純利益から税金等を引いた利益
これら利益の区別を理解しておくと、データの意味が正確に理解できます。


この表をパッと見ると、費用の多くを占めているのが「人件費」であることがわかります。
それでは、この人件費を削減することが経営改善につながるのか。
答えは全力のノーで、安直にそんなことをすれば、余計に苦しくなってしまいます。
なぜなら人がいて初めて利益を生み出すことができるからです。
必要な人員を減らして良いことは一つもないでしょう。
今ある経営資源の中で、いかに増益させるかが求められています。



なかなか絶望的な状況なんですね……



うん。でもこういった客観的なデータを分析して、現状把握することが大切だよ。


またこの章では急性期一般入院料1導入についてのメリットやデメリットなども解説しています。
診療報酬のしくみ


次に2章では「診療報酬のしくみ」についておおまかな事項がまとめられています。
医事課にいれば頭に入っている知識かもしれませんが、初心に帰って復習することができます。
病院経営をする上で診療報酬、特にDPCについての知識は必要不可欠です。
この章を読めば基本的なことが学べます。



適時調査のことも載っていますね



診療報酬返還や保険医療機関の指定取消なんてなったら経営に甚大な被害が及ぶからね


病院収支のしくみ


つづいて3章では「病院収支のしくみ」について解説しています。
この章で一番大切なのは財務諸表(決算書)です。
貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書はどこかで聞いたことがあると思います。
これら財務諸表を正確に読み解くことで、経営状態を把握することができます。
おそらく、この章を読んだだけでは財務諸表の知識は足りないので、簿記の勉強をすることをおすすめします。



財務諸表は数字だらけでよくわかりません



借方貸方とか独自の用語が多くて、とっかかりにくいよね。
そんな君におすすめの本があるよ。


定価:1,540円(税込)
こちら財務諸表の入門書で、とてもわかりやすいのでおすすめです。
何より読んでいて面白いです。
これを読めば基本はバッチリOKでしょう。
医療機関の事務員で財務諸表が読めて、分析できる人材はそう多くはないです。
簿記を勉強することで、また違った視点から病院が見えてきます。
簿記の万能感はすごくて、株式投資や企業間の取引など幅広く使えるのでおすすめです。
まとめ:病院経営についての基礎知識が学べる
今回は医療経営に関する基本的な知識を幅広く学ぶことのできる本をご紹介しました。
スラスラ読むことができて、優秀な入門本であるなと感じました。
興味を持たれた方は、ぜひ一度読んでみてください。



これなら猫にも読めそうです



また感想教えてね、絶対の絶対だよ



あわわ、絶対読まないといけなくなった
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
たくさん勉強して質・価値の高い医療事務になりましょう!