2年に一度、年末くらいになると病院の医事課がそわそわし始めます。
それは診療報酬の改定があるからです。
ニュースで改定率がどうの本体部分の引き上げがどうの、というのを見たことがあるかもしれません。
まさしくそれです。
診療報酬改定は病院にとって大型イベントとなります。
この記事では、そもそも診療報酬の改定とは何かについてお伝えします。
ニュースで見たことはありますが、何が起きているのかよくわからないです
よし、ざっくり理解できるよう解説するよ
診療報酬改定の概要
診療報酬は「本体」と「薬価」からなる
診療報酬は「本体」と「薬価」で構成されています。
本体:診療や医療サービスの対価で医療従事者の人件費などに充てられる
薬価:医薬品や医療機器の公定価格を定める
診療報酬は点数表をもとに算定します。
点数表には、技術やサービスを点数化したものが記載されているのです。
点数表は健康保険法の「診療報酬の算定」で決められているよ
これは全国共通のため、保険医療機関は勝手に点数を変えることができません。
改定は変化への対応が目的
診療報酬は2年に1度見直され、国により改定が行われています。
医学医療は日々進歩していますし、日本の経済状況も時代とともに変化しています。
そういった変化に対応するために改定が必要なのです。
ちなみに、介護報酬と障害福祉サービス等報酬の改定は3年に1度行われます。
6年に1度3つの改定が重なるため、これをトリプル改定と言います。
(惑星直列ならぬ改定直列ですね、ちょっと違いますか)
議論とそれぞれの主張
改定内容を決定するために各方面で議論がなされます。
たくさんの意見が飛び交う中、決着をつけることはめちゃ大変です。
物価高や賃上げの対応のために引き上げて!
いやいや現役世代の保険料負担の軽減のために引き下げるべき!
様々な立場からの意見や要望に対して、どう折り合いを付けるのかが注目されます。
診療報酬改定の決定
改定までの流れ
診療報酬改定のざっくりとした流れを図にしてみました。
ちなみに、2024年度改定の基本方針は2023年12月11日に公表されました。
また、改定率は同年12月20日に決定されました。
そして、今までは4月に診療報酬改定が施行されていましたが、2024年度は6月施行と2か月後ろ倒しになります。
今までは告示発出から施行まで1か月しかなかったため、病院やシステム屋さんのスケジュールがひっ迫していました(ほんと、マジでそうだよ!)。
これで少しでも負担が減ることを願います。
基本方針の策定
厚生労働省が診療報酬額を決めるため、
診療報酬改定にかかる基本方針決めて
と社会保障審議会(医療保険部会と医療部会)に委ねます。
それを受け、社会保障審議会は審議を行い、基本方針を策定します。
厚生労働大臣の諮問機関のひとつで、医療保険部会、医療部会により基本方針が決められます。
いくつかの審議会により年金や人口などの課題を審議しています。
その中で医療の管轄が医療保険部会・医療部会です。
診療報酬点数の設定
次に厚労省は改定率や基本方針に沿った診療報酬改定を決定するために、
具体的な診療報酬点数の設定ってどうすればいいかな?
と中央社会保険医療協議会(中医協)に意見を求めます。
これを受けて中医協は診療報酬改定案について調査や審議をします。
そして、具体的な診療報酬の設定の意見を厚労省に返します。
支払側委員会7人(医師や歯科医師などを代表する団体から選出)、診療側委員会7人、公益委員会6人の三者構造です。
また他に10人以内の専門委員が置かれています。
厚労省の諮問に応じ審議をしたのち、答申します。
支払側委員会の所属団体によっては要望内容に思惑が反映されます。
診療報酬改定の正式決定
厚労省は、
よし、意見も聴いたし、診療報酬改定を決定する!
となり、3月頭に診療報酬改定にかかわる告示と通知が発出されます。
また、このような説明資料も作成しています。
医事課はこの時期、仕事量がピークを迎えます。
3月いっぱいまで準備と対応に追われるのです。
まずは多くの改定情報を読み込み、自分が把握する
↓
それらの情報をまとめ、関係各所に周知する
↓
算定できる項目の検討とシステム対応を確認する
↓
システムの検証をする
(だいたい問題が起こります。この時点で気づけばはなまるオッケー、優秀です)
↓
運用開始!
さらに改定の「疑義解釈」がいつも3月31日に出るので、万が一解釈違いに気づいたら迅速に対応しなければなりません。
この時期の病院は改定の対応で忙しいんですね
そうだね。医事課にとって重大イベントの一つだよ。
改定という一大イベントは医事課だけが参加するものではありません。
医師や看護師などを含め院内全体で対応していくことが重要です。
改定は次年度からの経営や現場の運用等にも直結します。
院内で無関係の職員はいないはずです。
さらに、医事課内でも知っている人と知らない人、情報を追っている人いない人に差があるようにみえます。
医事課の一部のメンバーだけでなく、全員が自分に関わることだと認識して動いていく必要があります。
もちろん1、2年目の新人さんも含めてです。
診療報酬の基礎を理解していないと、改定の話もチンプンカンプンだと思うので、日頃から医事課の基礎能力を上げていくことが必要になります。
教育や指導は大変ですが、こういう時に動ける人材、やっぱりいてほしいです。
こういったイベントに全職員が一丸となって動ける病院が生き残るのだなと思います。
少し話が逸れましたが、診療報酬の改定はざっくりとこんな感じで進んでいます。
おまけ:改定率の推移
師走になるとニュースで「改定率」の話題が取り上げられます。
改定率とは、前回改定からの診療報酬の増減額をパーセントで示したものです。
2024年度の改定率は、本体+0.88%および薬価▲1.00%で全体(ネット)では▲0.12%となりました。
まとめ:改定のおおまかな流れをイメージする
今回はそもそも診療報酬の改定とは何かについてお伝えしました。
ポイントをまとめます。
だいたいの流れを把握していればOKです。
- 内閣が改定率を決定する
- 社会保障審議会が基本方針を策定する
- 中医協が個々の点数設定や算定条件について意見を出す
- 厚労省が診療報酬改定を正式に決定する
改定についてイメージがつかめました
よかった。医療事務なら改定の情報は追っていこうね。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
たくさん勉強して質・価値の高い医療事務になりましょう!