「医療法」は医療機関にとって必要なことを定めた法律です。
医療事務としても重要な存在ですが、普段意識することはあまりないでしょう。
医療法は定期的なアップデートを繰り返していて、時代の流れを読むためにも常に追いかけていく必要があります。
今回はそんな医療法改正の流れを追っていきます。
存在は知っているのですが、よくは理解していない感じです
それじゃあ、ポイントをまとめてみよう
医療法とは
戦後、医療機関の整備のためにできた
終戦後の日本は感染症などの急性期患者が中心の時代でした。
医療機関の数を充足させることが急務でしたが、一定水準の確保も必要です。
そこで、昭和23年に医療法が誕生しました。
これによって、施設基準が設けられることとなったのです。
無秩序に量だけ増やしても、質が悪かったら意味ないからね
患者の利益の保護が目的
そもそも医療法とは、以下について必要事項を定めたものです。
- 患者の適切な選択の支援
- 医療安全の確保
- 医療機関の開設・管理・整備
- 医療機関の機能分担や連携の推進
そして、「国民の健康の保持」が最大の目的です。
そのために患者の利益を保護し、良質で適切な医療を効率的に提供する体制を確保することが必要というわけです。
時代の変化に対応するため改正が行われる
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という有名な出だしがあります。
まさに時代は川のように常に流れています。
以前のルールでは対応できないことも多々あります。
それは医療をとりまく環境も例外ではありません。
そんな時代の変化に対応するために、医療法もアップデートを繰り返しています。
医療法改正の歴史
この年表でざっくりとした流れを掴もう
第1次医療法改正
1回目の改正は昭和60年に公布されました。
医療法制定から40年ほど間が空いていますね。
医療施設の量が充足されたことによって、次なる課題が出てきました。
人口の多い地域に医療資源が偏在したり、連携がうまく取れていなかったりしていました。
そういった課題を解決するために、改正が行われました。
- 医療計画制度の導入
-
都道府県ごとに地域医療計画を策定し、病床増加のコントロールを図った。
- 医療圏の設定
-
2次医療圏(複数の市単位)と3次医療圏(都道府県単位)に分けた。
そして、それぞれの病床数を規制した。
医療計画は6年に一度、見直しがあるよ
第2次医療法改正
2回目の改正は平成4年に公布されました。
時代は高齢化社会へ突入していきます。
この高齢化に対する法整備が図られました。
- 医療提供の理念の明文化
-
患者に対して良質で適切な医療を効率的に提供することを、医療の担い手に求めた。
- 特定機能病院と療養型病床の制度化
- 広告規制の緩和
-
病院設備などの情報を院外広告できるようになった。
- 医療法人の附帯業務の拡大
-
医療法人によるスポーツクラブなどの健康増進施設の設置ができるようになった。
患者サービスの向上も図られているよ
特定機能病院については↓の記事を参考にしてください。
第3次医療法改正
3回目の改正は平成9年に公布されました。
改正の間隔が短いですね。
要介護者の増大に対応するために介護体制の整備が行われました。
また、医療機関の役割分担の明確化と連携の促進も図られました。
- 療養型病床群制度の診療所への拡大
- 地域医療支援病院の創設
- 医療法人の業務範囲の拡大
-
第二種社会福祉事業まで拡大された。
特別医療法人制度が導入された。
- インフォームドコンセントの努力義務規制の整備
第一種
「特別養護老人ホーム」や「児童養護施設」など利用者が施設に入所し、保護・支援サービスを受けるもの
第二種
「デイサービス」や「ショートステイ」など通所や訪問によって支援をするもの
第4次医療法改正
4回目の改正は平成12年に公布されました。
高齢化の進展や疾病構造の変化に対応するために改正が行われました。
- 入院医療提供体制の整備
-
一般病床と療養型病床が追加された。
- 医療計画制度の見直し
-
「必要病床数」から「基準病床数」へ変更された。
- 広告規制の緩和
-
医療機能評価の結果や医師の略歴などが広告できるようになった。
- 臨床研修の必修化
医師の臨床研修は2年以上。
1年目をジュニア、2年目をシニアと呼んだりするんだ。
第5次医療法改正
5回目の改正は平成18年に公布されました。
質の高い医療サービスを適切に受けられる体制の構築が図られました。
- 有床診療所にかかる規制の見直し
-
療養病床以外の病床を一般病床に含めた。
48時間を超える入院を禁止する規制が廃止された。 - 医療機能情報提供制度の創設
-
医療機関は都道府県知事に病院の情報を報告し、都道府県知事はそれを公表することが義務化された。
いわゆる「医療情報ネット」のこと。
↓の厚生労働省サイトから、各都道府県ごとの医療情報ネットが見られます。
- 入院診療・退院療養計画書の作成の義務化
- 広告規制の緩和
-
一定の性質をもった項目郡ごとにまとめて「〇〇に関する事項」と規定する「包括規定方式」が導入された。
↓の厚生労働省サイトから、医療機関の広告ガイドラインが見られます。
Q&Aなんかは面白いので、一度ご覧ください。
- 医療安全の確保に関する責務の明確化
-
医療安全支援センターの制度化が行われた。
- 医療法人制度の見直し
-
社会医療法人が創設された。
有料老人ホームの設置が可能となった。
- 医療対策協議会の制度化
-
医師確保対策として都道府県の「医療対策協議会」が制度化された。
医療の安全に関する情報の提供を実施する施設です。
各都道府県、保健所設置地区、二次医療圏ごとに設置されます。
患者や住民からの苦情や相談の対応、医療安全推進協議会の開催などが主な業務です。
第6次医療法改正
6回目の改正は平成26年に公布されました。
医療介護総合確保推進法の一環として改正が行われました。
- 地域医療構想に基づく病床数の整備
- 病床機能報告制度の創設
- 臨床研究中核病院の設置
- 医療事故調査制度の創設
「地域包括ケアシステム」の構築によって、医療と介護の連携強化を推進したよ
第7次医療法改正
7回目の改正は平成27年に公布されました。
医療機関の役割分担と連携や、医療法人の経営の透明性確保とガバナンス強化が主な目的です。
- 医療法人制度の見直し
-
財務諸表などに係る公認会計士の監査が義務化された。
- 地域医療連携推進法人の創設
-
地域で医療機関等を開設する複数の非営利法人を一体的に運営する法人が創設された。
第8次医療法改正
8回目の改正は平成29年に公布されました。
特定機能病院の安全管理体制の確保や、検査の精度確保が目的です。
- 特定機能病院におけるガバナンス制度の強化
- 検体検査の精度確保
-
医療機関が委託する検体検査業務の精度管理の基準を明確化した。
- 広告規制の見直し
-
医療機関のwebサイト等を適正化するために、虚偽または誇大な内容を禁止した。
誇大広告って例えばどんなですか?
患者さんの口コミとかかな。
「実際にここの最新治療で治りました!」なんて載せるのはNG広告だよ。
第9次医療法改正
9回目の改正は令和3年に公布されました。
医師の働き方改革がメインです。
- 医師の働き方改革
-
医師の労働時間の短縮を図る。
- 医療関係職種の業務範囲の見直し
-
診療放射線技師や救急救命士などへのタスクシフト・シェアが推進された。
- 外来機能報告制度の創設
- 新興感染症等の拡大における医療計画への位置づけ
-
医療計画の記載事項に「新興感染症等の感染拡大時における医療」が追加された。
まとめ:ざっくりとした経緯の理解でOK
今回は医療法改正の歴史を見ていきました。
内容を見ると時代の変化を感じることができます。
今後も医療法はアップデートを重ねていくでしょう。
医療事務としてポイントだけでも押さえておきたいですね。
医療法を理解することで、診療報酬の根本的な理解にも繋がりそうですね
そうだね。改正のポイントだけでも掴んでおこう。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
たくさん勉強して質・価値の高い医療事務になりましょう!