【経験者が解説】近所のクリニックは病院じゃないってどういうこと?

医療系の大学に入って、診療報酬の初回の講義で習ったことは、

病院とクリニック(診療所)は意味が違う
「プロなら使い分けなさい」

ということでした。
今まで気にしたことがなかったので、軽く驚いたのを憶えています。

医療業界で働く上での初歩的な知識ですので、今回はその違いについてお伝えします。
すでに知っている方は復習として読んでいただければ嬉しいです。

しろねこ

え、病院とクリニックは言い方の違いだけじゃないんですか?

くろねこ

うん。法律上での定義の違いがあるんだ。

もくじ

クリニックは病院じゃない

病院は20床以上、クリニックは20床未満

大きい病院や近所のクリニックのことを一緒くたに「病院」という人がいますが、厳密には間違いです。
もちろん、日常生活の会話の中で使う分には問題ありません。

でも、医療事務として働いている時は使い分けた方が良いです。
少しばかり恥をかいてしまうかもしれません。

病院とクリニックの違いは「医療法」で定義されています。

医療法とは
  • 1948年に制定
  • 必要に応じて改正されている
  • 医療機関の開設、管理、広告など医療機関が守るべき事項を定めた法律

医療法には次のように定義されています。

病院とは20人以上の患者を入院させるための設備を有する。
診療所とは患者を患者を入院させるための施設が19床以下である。

そして、病院やクリニックを総称して医療機関といいます。

くろねこ

知らなかった方も意外といるんじゃないかな

病床は5種類に分けられる

さらに病床は5種類に分けられています。

病床名対象患者
一般病床下の4つ以外の患者
療養病床長期療養が必要な患者
精神病床精神疾患患者
感染症病床規定された感染症患者
結核病床結核患者
病床種別は5種類です
半数以上が一般病床です

また、病床の種類によって人員配置設備の基準が違います。
適切な診療が行えるよう、政令や厚生労働省で定めているものです。

病床の種類を変更したい時は、医療機関所在地の都道府県知事による許可が必要です。

実際の業務で意識することはほとんどありませんが、知識として知っておくと良いです

病院報告

病床を持つ医療機関は保健所に「病院報告」を提出しなければなりません(毎月)。

実際に提出する書類です
今はオンラインで送ることができます

↓は病院報告についてのリンクです(厚生労働省HP)。
興味がある方は覗いてみてください。

私は病院報告の担当になったことがあります。
数字がおかしかったりすると保健所から電話がかかってきました。
その場合は修正して再提出します。

保険医療機関とは

さて、次に医療機関は医療機関でも「保険医療機関」とは何かをざっくり解説します。

医療保険制度のしくみ

日本の医療保険制度は、

  • 国民皆保険制度
  • フリーアクセス
  • 現物給付

という特徴を持ちます。

要するに、全員何かの保険に入れて、好きな医療機関を選べて、医療費を払う前に診療を受けられる、というものです。

上の図は私たちが保険診療を受ける際の流れを示しています。
この医療保険制度によって、治療費の個人負担が抑えられるというわけです。
受診時に受付の人が保険証を見せてと言う理由は、保険者に診療報酬を請求するためです。

自由診療

保険証が使えない診療です。
保険証の未提出、交通事故、美容形成などが当てはまります。
単価も1点10円とは限りません。

保険診療をするには申請と登録がいる

前述のような保険診療を行うために、医療機関や医師がやらなければいけないことがあります。
それは厚生労働大臣への申請です。

病院やクリニックは「保険医療機関」として指定を受けなければ、保険診療はできません。
申請する際は↓の書類を提出することになります。

実際に提出する書類様式です

6年更新です。
更新時期になると書類が送られてきます。
不備があると電話がかかってきます。
(私のもとにも電話がきたことあります)

また、医師も「保険医」として登録を受けなれば、保険診療を行うことはできません。
医師免許を取得したと同時に勝手に登録されるわけではなく、自ら申請が必要です。

指定を受けることができたら保険診療を行うことができます。
しかし、保険診療をするためには、ルール(療養担当規則など)を理解・遵守し、点数表をもとに診療報酬を請求しなければいけません。

監査や調査がある

たまに医療費の架空請求が発覚する事件、ありますよね。
あれは不正の疑いがある保険医療機関に対して監査が入るからです。

不正にはこんなものがあります
(ダメ。ゼッタイ。)
  • 架空請求
    • 実際には診療してないのに請求
  • 付増(つけまし)請求
    • 実際よりも多い回数を請求
  • 振替請求
    • 実際よりも高い点数項目を請求
  • 二重請求
    • 自費診療と保険診療のダブルで請求
  • その他
    • 保険医でないのに請求、自由診療なのに保険診療で請求など

こんな悪いことをすると、最悪保険医療機関や保険医の指定を取り消されます

しろねこ

悪いことができないように、監査が行われているんですね

くろねこ

そうだね。患者さんからの情報提供で監査が入ることもあるよ。

余分にもらっていた報酬は当然の如く返還、さらに指定取り消しの日から5年間は再指定を受けられないと踏んだり蹴ったりです。
こうなれば自由診療しかできませんから、事実上の倒産ですね。

↓は関東信越厚生局のHPで、実際に不正があり処分を受けた事案が閲覧できるページです。

保険医療機関の指定の話は、診療報酬請求事務能力認定試験で頻出問題だったりします。

まとめ:病院とクリニックは医療法により定義されている

今回は病院とクリニックの違いや保険医療機関についてお伝えしました。

・病院とクリニックは医療法で定義されている
20床以上が病院、20床未満がクリニック
・保険診療を行うためには、厚生労働大臣の指定を受ける必要がある

しろねこ

今日から病院とクリニックという言葉を使い分けます!

くろねこ

うんうん。小さいことも意識できる医療事務は信頼できるよ。

最後まで読んでいただいてありがとうございます。
たくさん勉強して質・価値の高い医療事務になりましょう!

もくじ